イカがコレステロール値に与える影響|成分・食べ方のポイントを紹介

イカにはコレステロールを減らす働きのある「タウリン」が含まれていることをご存知ですか。

農林水産省のホームページによると、タウリンは体内でも作り出すことができますが、必要量には足りないため、食品から取り入れる必要があるそうです。

しかし、イカはコレステロールや塩分・プリン体も含むため食べ過ぎには注意が必要です。
今回はイカに含まれるコレステロール量や食べ方のポイントをご紹介します。
イカにはどのくらいのコレステロールが含まれているのでしょうか。
文部科学省の食品成分データベースを基に一覧を作成しました。

◇イカ(生)に含まれるコレステロール量(100gあたり)
イカの種類 コレステロール量
けんさきいか 350 mg
やりいか 320 mg
あかいか 280 mg
するめいか 250 mg
ほたるいか 240 mg
こういか 210 mg
イカの種類によってコレステロール量に差があることがわかります。
皮つきのまだこ110 mg、めかじき72 mg、皮つきのさんま68 mgであることを踏まえると、イカのコレステロール含有量は魚介類の中では多いほうだといえます。

文部科学省 食品成分データベース

体内のコレステロールは2割〜3割が体外からとり入れられ、7〜8割は糖や脂肪を使って肝臓などで合成され、その量は体内でうまく調整されています。

厚生労働省 e-ヘルスネット コレステロール

コレステロール値を改善したい場合は食品からのコレステロール摂取量を減らすだけでなく、糖や脂肪などのコレステロールの原料となる成分の摂取量も減らす必要があります。

次にイカに含まれる他の栄養素について調べてみました。
タウリンは、生体内で遊離した状態で存在する含硫アミノ酸様化合物の1つで、イカやタコ・貝類・甲殻類及び魚類(心臓・脾臓・血合肉)に多く含まれています。

人間の体内でも作り出すことができますが、必要量には足りないため、食品から取り入れる必要があります。

◇タウリンの働き
血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす。
② 血圧を正しく保ち、高い血圧を下げる。
肝臓の解毒能力を強化。アルコール障害にも効果的。
④ インスリン分泌を促進し、糖尿病の予防・治療に有効。
⑤ 視力の衰えを防ぎ、新生児の脳や網膜の発育を助ける。

タウリンは水溶性なので、汁ごととれる鍋物やスープ等に利用すると有効に摂取することができます。

農林水産省 タウリンとはどのような栄養素ですか。また、体によいとのことですが、働きを教えてください。

タウリンがコレステロールを減らす作用機序は下記の通りです。

タウリンは、コレステロールの最終代謝産物である胆汁酸と結合し、抱合胆汁酸として胆汁中に排泄します。そのため、タウリンを積極的に摂取することで胆汁酸の分泌が促進し、コレステロールの代謝が亢進(こうしん)します。

DIオンライン 魚介類のタウリンでコレステロールの代謝促進

タウリンはドリンク剤にも含まれている成分です。
リポビタンDのホームページには「主成分のタウリンはアミノ酸の一種で、体の各組織に存在しています。」と記載されています。

大正製薬 リポビタンD

タウリンは体に必要な成分であり、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす効果があることがわかりました。タウリンを含んでいるイカを食べることはコレステロール・中性脂肪の改善に効果的であるといえます。
イカの摂取上限は定められていないため、イカに含まれる成分の摂取上限から1日の摂取目安量を算出してみました。

◇イカに含まれる成分の1日の摂取上限量とイカ相当量
成分名 1日当たりの摂取上限量 イカ相当量
コレステロール なし
タウリン なし
食塩 6 g未満 するめいか:1200 g
やりいか:1500 g
プリン体 400 mg以下 するめいか:214 g
やりいか:249 g

一般社団法人 日本動脈硬化学会 コレステロール摂取に関するQ&A

日本高血圧学会 高血圧の予防のためにも食塩制限を―日本高血圧学会減塩委員会よりの提言

文部科学省 食品成分データベース

e痛風治療ガイド

コレステロール・タウリンに関しては摂取上限量が定められていませんでしたが、食塩・プリン体の摂取量の観点からイカの摂取量には注意が必要です。

・食塩
食塩の摂取上限量は1日6 g未満です。イカを生のまま食べる場合、1000 g以上摂取しても食塩相当量は6 gには到達しません。

しかし、イカを刺身やお寿司として食べる場合は醤油をつけることが多いです。醬油にも食塩が含まれているため、より多くの食塩を摂取することになります。醤油のつけすぎには注意しましょう。

・プリン体
プリン体の摂取上限量は1日400 mg以下です。イカはプリン体を多く含む食材で、200 g程度で摂取上限量に達します。尿酸値が高めの方は特に注意が必要です。

様々な食品をバランスよく食べることで栄養バランスも整いやすくなります。好きなものばかりの偏った食事になっていないかご自身の食生活を振り返ってみましょう。
イカを食べるときのポイントは2点あります。
生のまま食べること
調味料は控えめにすること(塩や醤油をかけすぎない)

2つのポイントを説明します。

① 生のまま食べること
先ほど記載した通り、イカに含まれるタウリンは水溶性です。茹でたり、煮たりしてしまうと溶け出してしまいます。生のまま食べるとタウリンを無駄なく摂取できます。

新鮮な魚介類を食べるときは寄生虫であるアニサキスに注意が必要です。

・魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。
 また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。

・内臓を生で食べないでください。

・目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。

厚生労働省 アニサキスによる食中毒を予防しましょう

② 調味料を控えめにすること(塩や醤油をかけすぎない)
塩分の過剰摂取は血圧を高くする要因になります。
イカに限らずお刺身やお寿司を食べるときは醤油のかけすぎ・つけすぎに気を付けましょう。

健康な日本人の成人男女が当面目標とすべき1日の食塩摂取量は各々7.5g未満と6.5g未満とされていますが、最近の調査結果によるといずれも平均2g程度(濃口しょう油に換算すると小さじ2杯強に相当)上回っている状況です。

厚生労働省 e-ヘルスネット 栄養・食生活と高血圧

イカを食べるときに限らず、普段の食事から調味料のかけすぎ・つけすぎに気を付けて減塩を心がけましょう。
イカにはコレステロールが含まれていますが、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らすタウリンも豊富に含まれていることがわかりました。

しかし、コレステロールの約80%は肝臓でつくられ、残りの約20%は食事から摂取されます。このため、食品に含まれるコレステロールの量を減らすだけではコレステロールの管理は不十分だと言われています。

下記のコラムではコレステロールを下げる献立を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

朝食でコレステロールを下げる3つのポイント|実例献立4選

コレステロールはタンパク質であるHDLやLDLと結合して血液中を移動します。よく耳にするHDLとLDLの役割は下記の通りです。

◇HDLとLDLの役割
HDL(善玉) 使われずに溜まったコレステロールを回収する「お掃除隊」
LDL(悪玉) 体内で作られたコレステロールを全身に運ぶ「運搬隊」
全国健康保険協会によると基準値は下記の通りです。

◇基準値
総コレステロール 140~199 mg/dl
HDLコレステロール 40 mg/dl以上
LDLコレステロール 120 mg/dl未満
全国健康保険協会 脂質

まずは、定期的に健康診断や血液検査を受け、ご自身のコレステロール値を把握することが大切です。基準値範囲外の場合は早めに適切な対策をとりましょう。
齋藤先生_背景透過_切り抜き

監修:ナグモクリニック東京院 女性更年期外来担当医師
斎藤 糧三 医師

1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。
2013年よりナグモクリニック東京院で栄養外来と女性更年期外来を担当している。
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