non-HDLコレステロールとは|計算式やLDLとの関係。高いから下げたい、低いときは?

non-HDLコレステロールとは|計算式やLDLとの関係。高いから下げたい、低いときは?

血液検査の結果にある項目”non-HDLコレステロール”。
値が高いと、心血管系の健康リスクが増加する可能性があるため、特に中性脂肪(トリグリセリド)の高い人などは、non-HDLコレステロールの値が重要です。

このコラムでは「non-HDLコレステロールとは何なのか」をわかりやすく説明します。計算式や高い・低い場合の影響や改善はどうすればいいのかも紹介しますので、健康づくりにお役立てください。

監修者_医学博士_単少傑

監修

株式会社レイデルジャパン

コンシューマーヘルスケア事業本部 RA,R&D統括

単 少傑 薬学博士

non-HDLコレステロールの定義

non-HDLコレステロールとは総コレステロール(血液中のコレステロールの全量)からHDLコレステロール(善玉コレステロール)を引いた値のこと

non-HDLコレステロールとは、総コレステロール(血液中のコレステロールの全量)からHDLコレステロール(善玉コレステロール)を引いた値のことです。
非HDLコレステロールと表現されることもあります。

中性脂肪が高い方は、医師からLDLコレステロール(悪玉コレステロール)に加えてnon-HDLコレステロール値のチェックを進められることが多いです。

non-HDLコレステロールの内訳

では、non-HDLコレステロールにはLDLコレステロール以外の、どのような成分のことを指しているのでしょうか。
内訳は以下のようになっています。

  1. ・VLDL(超低密度リポタンパク質)
  2. ・IDL(中間密度リポタンパク質)
  3. ・LDL(低密度リポタンパク質)
  4. ・Lipoprotein(a)(リポプロテイン(a))

たくさんの成分がありますが、結論としては、non-HDLコレステロールに含まれるのは、VLDL → IDL → LDLという順番で変化するリポタンパク質(VLDL、IDL)と、すでにLDLコレステロールとして存在しているリポタンパク質、さらにLipoprotein(a)という名前のリポタンパク質ということになります。

医療法人社団 健診会 東京メディカルクリニック

藤岡由夫.レムナントリポ蛋白とnon-HDLコレステロール.2021,43 巻 4 号 p. 458-464

non-HDLコレステロールの内訳

※トリグリセリド=中性脂肪

VLDL(超低密度リポタンパク質)とは

VLDLは肝臓から分泌されるリポタンパク質で、主にトリグリセリド(中性脂肪)を主成分とし、コレステロールやリン脂質、アポリタンパク質を含んでいます。

血液中で、末梢組織にトリグリセリドの一部を脂肪酸として末梢に届けます。その過程でVLDLは少しずつトリグリセリドを失い、IDLへと変化します。

IDL(中間密度リポタンパク質)とは

VLDLがトリグリセリドを少しずつ失い、構成が変化したものです。

IDLはVLDLよりもトリグリセリドが少ないため、コレステロールが相対的に増え、密度も増しています。IDLはさらにトリグリセリドを失い、コレステロール量と密度を増し、最終的にLDLへと変化します。

LDL(低密度リポタンパク質)とは

LDLは、IDLからさらにトリグリセリドが失われたものです。

LDLは主にコレステロールを含み、トリグリセリドがほとんどない状態になっています。血中のLDLは、動脈に沈着して血管系の健康のリスクを高めることがあります。

Lipoprotein(a)(リポプロテイン(a))とは

Lipoprotein(a)(リポプロテイン(a))は、LDL(低密度リポタンパク質)に似た構造を持つリポタンパク質です。
主にApoB-100(アポリポタンパク質B-100)とApo(a)(アポリポタンパク質(a))が結びついて形成されます。

non-HDLコレステロールをLDLコレステロールと区別する理由

non-HDLコレステロールがLDLコレステロールと区別されるのはなぜでしょうか。それは、LDL以外のnon-HDLコレステロールの要素も血管系の健康リスクになる可能性があるためです。

2002年に雑誌Circulation Researchで発表された論文「VLDL and its role in atherosclerosis」では、VLDLは体内でトリグリセリドを運搬し、IDLやLDLに変化する過程で動脈壁にコレステロールが沈着する原因となることが示されています。そのため、LDLコレステロールだけではなく、non-LDLコレステロールの数値をチェックすることが大切です。

non-HDLコレステロールの計算式と基準値

では、ここからはご自身のnon-HDLコレステロールを算出する方法と基準値を見ていきましょう。

non-HDLコレステロールの出し方

non-HDLコレステロールの計算式

non-LDLコレステロールを算出するための計算式は次のようになります。

non-HDLコレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール

健康診断の結果などから計算してみてください。

non-HDLコレステロールのめやす

次に目安を確認しましょう。

公益社団法人 日本人間ドック・予防医療学会が定めるめやすは下記です。団体によって基準値に差がありますが、数値が高い・低いと健康リスクが高いとされます。

non-HDLコレステロールのめやす

異常

89 mg/dL以下

基準範囲*

90~149 mg/dL

要注意

150~209 mg/dL

異常

210 mg/dL以上

*将来、脳・心血管疾患発症しうる可能性を考慮した基準範囲

数値が高いと、動脈系のリスク、脂質代謝異常、甲状腺機能系のリスクなどが疑われます。また低い場合は、栄養吸収の問題、低βリポたんぱく系の疾患、肝臓系の疾患などが疑われます。

公益社団法人 日本人間ドック・予防医療学会

例:Aさんの場合:健康リスクが高い

総コレステロール(TC)

250 mg/dL

HDLコレステロール(HDL-C)

40 mg/dL

計算式は下記になります。

250mg/dL−40mg/dL=210mg/dL
この数値は「異常」となり、健康リスクが高いということになります。

non-HDLコレステロールが高い・低い場合のリスクと改善方法

non-HDLコレステロールが高い場合のリスク

non-HDLコレステロールが高い場合、心血管系の健康のリスクが増加します。とくに心臓や脳の健康リスクに繋がることがあるため注意が必要です。
高値の方は医師に相談したり、non-HDLコレステロールを下げるための取り組みをおこないましょう。

また「今はまだ大丈夫!」という方も、要注意に分類される数値にある場合や基準値からはみ出してしまいそうな場合には注意してください。健康リスクを減らすために対処するのがおすすめです。

リスク軽減のためにできることの一例

non‐HDLコレステロール管理のアイデア

non‐HDLコレステロールが高くなることで発症するおそれのある疾患のリスクを下げるためには以下のような取り組みをおこないましょう。

  1. 1.健康的な食事
  2. 2.LDLに作用するサプリを飲む
  3. 3.定期的な運動
  4. 4.禁煙
  5. 5.アルコールの適量摂取
  6. 6.ストレス管理

non-HDLコレステロールが低い場合は?

適切な範囲での低い値は問題ないですが、極端に低い場合には医師に相談しましょう。
極端な低値が続くと、性ホルモンや副腎皮質ホルモンなどのホルモンバランスや免疫機能への影響、脂肪の吸収不足などが懸念されます。

健康的な食事

通常、食事からのコレステロール摂取量は約20%とされており、80%は肝臓が合成します。
ですが「たった20%ならそのままでも大丈夫!」というのは誤解です。食べ過ぎや高コレステロールな食事の場合、この割合は最大で50%に達することがあります。肝臓のコレステロール合成にはフィードバック機構が働いており、食事での摂取量によって肝臓でのコレステロール合成量を調整しようとしますが、限界もあります。

食事から過剰なカロリーや糖質を摂取すると、必要以上にコレステロールが合成されることがありますので注意が必要です。この状態が続くと、肝臓や動脈などの健康リスクになる可能性があるため、食事内容の見直しは重要です。

理想的なコレステロールの摂取割合は【食事から20%、肝臓で80%※】です。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控え、食物繊維を多く含む食品(全粒穀物、野菜、果物)を積極的に摂取しましょう。

※健康的な食生活を維持する上での目安ですが、個人差もあるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。

大和市ホームページ

具体的なLDLコレステロール対策におすすめの食材などは別のコラムで紹介していますので参考にしてください。

サプリを飲む

植物から抽出できる「ポリコサノール」という成分をご存じですか?
そのなかでも、キューバ産のサトウキビから抽出されるポリコサノールに、総コレステロールや、non-HDLコレステロールに含まれるLDL低下をサポートする機能が報告されています。

コレステロールにかんする作用の報告

キューバ産ポリコサノールのコレステロールに関する臨床試験データ
方法健常成人男女(年齢29歳~51歳)に、「キューバ産サトウキビ由来ポリコサノールが10mg含有錠剤」(n=22) もしくは「プラセボ※」(n=23)を1日1回8週間継続して摂取させ、 総コレステロール、LDLコレステロール、LDL/HDL比を測定。
結果「キューバ産サトウキビ由来ポリコサノール含有錠剤」群は、 プラセボ群と比較して、摂取8週間後に総コレステロール、LDLコレステロールが有意に低下し、 LDL/HDL比が有意に改善した。

※出典:Br J Clin Pharmacol 2000, 50: 255–262
プラセボとは有効成分を含まない見た目や味が同じもの

ポイント:食事由来・肝臓由来、どちらに作用するのか

コレステロール対策サプリを選ぶポイントとして、「食事由来のコレステロール」「肝臓由来のコレステロール」どちらに作用する成分なのかという点があります。
食事改善の重要性をお伝えしたセクションでも述べましたが、食事から吸収される外因性のコレステロールは約20%で、残りの80%は肝臓など体内で合成される内因性であるためです。

キューバ産ポリコサノールは、長年の研究で「肝臓でのコレステロール合成量を抑制する」作用機序が報告されているため、食事で対策している方が一緒に取り入れると、外と内、両方から数値改善を目指すことができます。

血中コレステロールの内訳

また、キューバ産ポリコサノールは、LDLを下げるだけではなく、総コレステロールを下げること、LH比(悪玉と善玉コレステロールのバランス)の改善、高めの血圧を下げるのをサポートすることも報告されています。

キューバ産ポリコサノール|報告されている機能性

①悪玉コレステロールを下げる 
②総コレステロールを下げる 
③悪玉と善玉のコレステロール比率を改善する 
④高めの血圧を下げる

コレステロールに対する機能性が多いなか、④で血圧に対する作用が入っており、「どういう関係があるの?」と不思議に思った方もいらっしゃるかもしれません。

じつは、コレステロールと血圧には切っても切れない関係があります。
ここまで記事を読み進めていらっしゃる方は、コレステロール対策の意識が高い方が多いと思いますので、以下でご説明いたします。

コレステロールと血圧の関係

血圧上昇の原因

non-HDLコレステロールが高い方に知っていただきたいのが、血圧が高めになる原因の1つは、コレステロールの蓄積であるということです。
今はコレステロールが少し高いだけでも、将来的にその影響が表れることもありますので注意が必要です。そういった健康リスクを知るための指標として、LH比があります。

コレステロールの比率・LH比

健康リスクを知るためのコレステロールの指標として、LH比(エルエイチヒ)というものがあります。健康診断結果などに表示されることもあり、名前は知っているという方もいらっしゃるかもしれません。
詳しく見ていきましょう。

善玉はコレステロールを回収する役割があるため、全身にコレステロールを運ぶ悪玉との比率バランスが大切という指標です。
以下の例で考えてみましょう。

 

LH比の考え方の例
 悪玉善玉LH比

Aさん

139

85

1.6

Bさん

120

40

3.0

AさんはBさんより悪玉コレステロールが高いですが、Bさんより善玉コレステロールも高いです。
その結果、悪玉と善玉の比率のバランスがBさんよりも整っていることになります。

計算式と基準

計算式と基準は以下の通りです。

LH比の計算方法
LH比の基準

LH比は、悪玉コレステロールを善玉コレステロールで割るだけで計算できます。
1.5以下を健康な状態とし、2.5を超えると健康のリスクが高い状態とされています。

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ポリコサノールは産地や植物によって構造が違うため、LDLコレステロールや血圧に対して同じ作用をするものがないことがわかっています。
機能性表示食品や特定保健用食品など、十分な科学的根拠が示されたものを選ぶのがおすすめです。

定期的な運動

定期的な運動はLDLコレステロールを低下させるほか、HDLコレステロールを増加させると共に、肝臓や血管系の健康リスクを下げることができます。

禁煙

厚生労働省は、喫煙はLDLコレステロールを増加させると発表しています。またLDLコレステロールの酸化を促進し、血管壁にコレステロールを沈着しやすくするといったメカニズムも公開されています。完全に禁煙するのが難しい場合にも、減らす努力をすることが望ましいです。

「特定健診・特定保健指導における禁煙支援」(厚生労働省)

アルコールの適量摂取

飲酒とコレステロールの関係についての関係性も指摘されています。
過剰な飲酒は、LDLコレステロールやトリグリセリドを増加させることがあると言われますので飲みすぎには注意が必要です。

「(2) 脂質異常症」(厚生労働省)

ストレス管理

ストレスを感じることで、体内でストレスホルモンが分泌されます。そのホルモンがコレステロール合成を促進し、LDLコレステロールが増加することがあります。
また、ストレスにより血圧があがることで心血管系のリスクを高めることがあります。

血圧が高いと動脈に負担がかかり、結果として動脈の健康を損なう可能性があるため注意が必要です。
深呼吸をする、運動によって解消するなど、ストレスを解消する手段をいくつか持っておきましょう。

趣味に没頭したり、睡眠の質を高めるのもおすすめです。

まとめ

non-HDLコレステロールとは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた数値のことで、VLDL、IDL、LDL、Lipoprotein(a)という4種類のリポタンパク質からなります。

non-HDLコレステロールは、LDLコレステロール単体と同じように血管壁に溜まってしまう場合もあります。そのため、LDLコレステロールの数値だけに着目するのではなく、計算式を使ってnon-HDLコレステロールの数値が基準値にあるかどうかにも気を配りましょう。

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