HDLコレステロールを増やすには?健康的に上げる方法と実践的アドバイス
健康診断や血液検査の結果、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低くて悩んでいませんか?
結論を言うと、健康リスクを回避するために、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げることと同じ位、HDLコレステロールを上げることは重要です。
このコラムでは、なぜHDLコレステロールが大切なのかから、具体的な上げ方までわかりやすく解説します。

監修
株式会社レイデルジャパン
コンシューマーヘルスケア事業本部 RA,R&D統括
単 少傑 薬学博士
コレステロールの重要性

まずは簡単に、HDLとLDLの違いをご説明します。
役割がわかると、HDLが大切とされる理由も理解しやすいと思います。
LDL(悪玉コレステロール)の役割
LDLは厳密には「コレステロール」ではなく、細胞膜を作ったりホルモンを作る材料となるコレステロールを運搬するための「リポタンパク質」です。
コレステロールを肝臓から目的地まで運ぶトラックをイメージしてください。
「悪玉」という名前をしていますが、正常な量の場合はあってはいけないものではありません。私たちが生きるためには必要な成分です。しかし、必要以上に血液中にあると、血管壁に沈着してさまざまな健康リスクに繋がります。
HDL(善玉コレステロール)の役割
LDLが全身にコレステロールを運ぶのに対し、HDLは血液中で余っているLDLを回収します。また、血管壁に付着しているものも引き抜いてくれます。
ひらたく言うと、余ってしまったLDLの掃除屋さんがHDLです。
HDLコレステロールを増やすべき理由とその効果

HDLが高くなることでLDLの排出が促進され、心血管系の健康リスク軽減※になります。
では、逆に低いとどうなるのでしょうか。
HDLコレステロールが少ないと困る理由
HDLが低いということは、余分なLDLを掃除する力が弱くなっている状態と表現できます。
- 余ったLDLが血液中に溢れてしまう
- 血管壁にこびりついたコレステロールが血液の通りを邪魔してしまう
- 血圧が高めになる
- さまざまな健康リスクに繋がる
HDLの正常値は40mg/dl以上※です。
それ以下だった方は増やす対策をおこなうようにしましょう。
HDLはそれ単体として指標となっていますが、LDLと共に「LH比」という指標の算出にも使用されます。
LH比とは
LDLとHDLの適切な比率をあらわす「LH比」という指標です。
この比率のバランスによってさまざまなリスクがあるかどうかを知ることができます。基準値はこちです。

例を見てみましょう。

AさんとBさんの比較です。AさんはLDLが高いためリスクが高いといえますが、HDLも高いです。
LH比の計算式に当てはめて計算すると・・・

HDLが低いBさんの方がリスクが高いと判定されます。
もちろん、どちらか一方を下げればいい・上げて比率を整えればいいということではありません。
LDLとHDLの比率のバランスが大切です。
LH比の計算式
下記がLH比の算出方法です。
健康診断の結果などからご自身の比率を確かめてみてください。
自分で計算するのが面倒だという方は、以下のボタンから自動計算機を利用できます。
診断結果をご用意のうえ、お試しください。

HDLコレステロールを増やすには?効果的な方法

HDLを上げるためにはどんなことができるでしょうか。
ここでは具体的な方法をご紹介します。
食生活の改善
食事内容でHDLが上がる量はごくわずかとされています。
リコピンでHDLが上がるという報告があるため、取り入れるのであればトマトなどのリコピン含有が多い食品を取り入れるのがおすすめです。
ただし、小さい〜中程度の改善とのことです。そのためこの方法だけではなく、別の方法も併用しましょう。
食事を改善することでLDLを下げ、HDLの活動を助けることは可能です。
コレステロールを吸着し、体外へ排出してくれる食物繊維を多く含んだ食材などがおすすめです。また、飽和脂肪やトランス脂肪酸の摂取を控えることも大切です。
LDLを下げるための食材や献立は別のコラムでご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
運動をする
運動はHDLを上げるとされています。
しかし、1回の運動では影響が出ないことがわかっていますので継続しましょう。
Minimal weekly exercise volume for increasing HDL-C level was estimated to be 900 kcal of energy expenditure per week or 120 minutes of exercise per week.
この論文では、HDLを増やすためには週に900kcalを消費または120分以上の運動をする必要があるとされています。
サプリメントを取り入れる
食事や運動でカバーしきれない部分をサプリメントで補うのもおすすめです。
キューバ産サトウキビ由来ポリコサノールという成分は、LDLを下げる・総コレステロールを下げる・LH比を改善する・高めの血圧を下げるのをサポートする機能性が報告されています。
LDLの蓄積は血圧が上がっていく要因の1つです。LDLが高い場合は管理することをおすすめします。
HDLコレステロールを上げるために避けるべき習慣

HDLコレステロールを上げたいなら避けるべき習慣があります。
直接的にHDLを下げることや、LDLを上げる習慣がこれにあたります。一例は以下です。
睡眠不足
睡眠はHDLに影響を与えるとされています。
40~70歳の成人2579例を平均2.6年間追跡した報告※では、6~7.9時間の睡眠に比べ、6時間未満の睡眠ではHDLが低下しています。
程よい睡眠時間は7~8時間/日なので、確保するように意識してみてください。
睡眠時間と寿命(死亡率)の関係を調べたところ、一日に7~8時間の睡眠をとっている人が最も寿命が長く、それより短くても長くても寿命が短くなることがわかりました。BMI、HbA1c、TG、HDLコレステロール、血圧も同様の傾向をしめし、7時間くらいの睡眠がこれらの数値が最もよいことが報告されています。
食生活の乱れ(脂質の摂りすぎなど)
食事から摂る脂質もHDLを上げるためには気を付けた方がよいでしょう。
飽和脂肪酸はLDLを増やし、不飽和脂肪酸はLDLを下げることがわかっているので、油の種類に注目しましょう。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を含む食品の一例
飽和脂肪酸が含まれる食品 | 不飽和脂肪酸が含まれる食品 |
---|---|
肉の脂肪・バター・生クリーム・チーズ・アイスクリームなどの乳製品、インスタント麺、揚げ物、パン、お菓子 など | 青魚・ナッツ類・オリーブオイルなど |
見えない油に注意
日本人が摂取する脂質の約78.4%が「見えない油」だと言われています。
見えない油とは、食品自体に含まれている油です。知らず知らずに大量の飽和脂肪酸を摂取していることも十分考えられるので気を付けましょう。
喫煙
喫煙によってHDLが減ることがわかっています。
喫煙習慣がある場合は禁煙によってHDLを本来の数値にできる可能性があります。
完全な禁煙が難しい場合でも、本数を減らしていくのがおすすめです。
過剰なアルコール摂取
アルコールは適量であればHDLを上げるとされています。
その一方で、トリグリセリド(中性脂肪)を増加させてしまうため、肥満や血圧に影響を及ぼす可能性があります。飲みすぎには注意してください。
※HDLを上げるためのアルコール摂取はとくに推奨されているものではありません
「適量のアルコール」とはどれくらい?
厚生労働省が定める「1日でこれ以上純アルコールを摂取すると健康リスクが高まりますよ」という指標をご紹介します。
生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール量)
男性 | 40g以上 |
---|---|
女性 | 20g以上 |
純アルコール量とは、お酒に含まれるアルコールの総量をグラム(g)で表したものです。
アルコール度数によって量に差があります。
一般的なアルコールの度数
いつも飲むアルコール飲料の純アルコール量はどれくらいでしょうか。
代表的なものを表にしました。確認してみてください。
| 度数(一般的なもの) | 純アルコール20g以下で飲める量 |
---|---|---|
日本酒 | 15% | 約180ml |
ビール | 5% | 約500ml |
焼酎 | 25% | 約110ml |
ワイン | 14% | 約180ml |
ウイスキー | 43% | 約60ml |
泡盛(古酒) | 35% | 約72ml |
缶チューハイ | 5% | 約500ml |
マッコリ | 6% | 約334ml |
シャンパン | 12% | 約122ml |
紹興酒 | 16% | 約158ml |
純アルコール20gまでの最大量を出す計算式は下記です。
最大飲用量(ml) = 20 ÷ ((アルコール度数 / 100) × 0.789)
純アルコール量計算機
計算機を作成したので、アルコールを飲むときに試してみてください。
※この量を毎日飲んでもいいという訳ではありません。休肝日を設けましょう
小数点第2位で四捨五入 |
※純アルコール量:入力した飲み物の容量に含まれる純アルコールの量
20gまで飲める最大量:入力したアルコール度数であれば何mlで20g未満に収まるか
ストレスを溜める
ストレスがかかり交感神経が刺激されると、血中脂質上昇作用のあるホルモンが分泌されます。
LDLが増えることで、HDLの負担が大きくなったり、処理しきれなくなってしまいます。
なるべくストレスを溜めないことを基本とし、解消方法も見つけておくようにしましょう。運動で発散させると、HDLも上がるので一石二鳥です。
まとめ
HDLコレステロールを増やす方法をお伝えしてきました。
基本的には食事や運動、サプリメントがおすすめです。
LDLを上げない、下げる、HDLを下げないという意味では食生活の改善(脂質に気を付ける)、禁煙とアルコールの適量摂取、生活習慣の改善などがあります。
どれも1回で効果が出るわけではなく継続することが求められるので、取り入れやすいところから始めていきましょう。