LDLコレステロールとは?改善するためのポイントを紹介
「コレステロール」という言葉は、多くの方がご存じだと思います。
ですが、その内訳や、「LDL-C」と「HDL-C」それぞれの役割については知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かんたんに言うと、LDL-C(悪玉コレステロール)は体内で作られたコレステロールを全身へ運ぶ「運搬トラック」、HDL-C(善玉コレステロール)は使わずに溜まったコレステロールを片付ける「回収トラック」の役割があります。
この記事では、コレステロールの役割やコレステロール値の基準値・改善方法をお伝えできればと思います。

監修
株式会社レイデルジャパン
コンシューマーヘルスケア事業本部 RA,R&D統括
単 少傑 薬学博士
コレステロールとは?

健康診断などでよく聞く「コレステロール」。細胞膜・ホルモン・胆汁酸を作る材料になる、体に必要な物質です。
コレステロールは2〜3割が体外からとり入れられます。そして、残りの7〜8割は糖や脂肪を使って肝臓などで合成されており、総量は体内でうまく調整されています。
健康診断などで「コレステロール(悪玉)が高いね」と指摘されることがありますが、食事から摂取されるコレステロールは全体の2〜3割のため、食事改善でアプローチできる部分には限界があると考えます。
肝臓などで合成される、7〜8割へのアプローチを検討しましょう。
LDLとHDLの違い

脂質であるコレステロールは水に溶けないため、血液中を流れるときはタンパク質と結合したリポタンパク質の状態で存在します。
結合するリポタンパク質の種類によって「善玉コレステロール」「悪玉コレステロール」に大別されます。
どのリポタンパクと結合するか | 日本での呼ばれ方 | 海外や医学的な呼ばれ方 |
---|---|---|
高密度リポタンパクと結合(High Density Lipoprotein) | 善玉コレステロール | HDL、HDLコレステロール、HDL-C |
低密度リポタンパクと結合(Low Density Lipoprotein) | 悪玉コレステロール | LDL、LDLコレステロール、LDL-C |
LDL・HDLは、色を塗った文字をつなげた略称になっています。
LDLはLow Density Lipoprotein、全身にコレステロールを運びます。HDLは、High Density Lipoprotein、あまったコレステロールを回収します。
どちらのコレステロールも、体には必要なものです。
善玉・悪玉に善悪というイメージがあるかもしれませんが、そのイメージは改めなければなりません。コレステロールのことをきちんと知ることが健康の秘訣です。
コレステロールの基準値
なぜ健康診断でLDLコレステロール値が高いと注意しましょうと言われるのでしょうか。
それはコレステロールが多すぎると血管の中に溜まり、血液の流れを悪くするからです。
コレステロール値の基準値は下記の通りです。
基準値表
総コレステロール | LDLコレステロール | |
---|---|---|
適正域 | 220 mg/dl未満 | 140 mg/dl未満 |
境界域 | 220~239 mg/dl | 140~159 mg/dl |
高コレステロール血症 | 240 mg/dl以上 | 160 mg/dl以上 |
検査結果でコレステロール値が高い方は、早めに医療機関を訪れ、食事療法や運動療法などの指導を受けることが大切です。
更年期とコレステロール
特に更年期の女性は、閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することでLDLコレステロール値が高くなります。詳しくは下記のコラムをご覧ください。
コレステロールは循環する
LDLとHDLの違いでご説明した通り、LDLコレステロールは全身へコレステロールを運搬する役割があります。
コレステロールは体に必要な物質ですが、LDLコレステロール値が高すぎると余分なコレステロールが溜まってしまう一因となります。
血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、下の図のように血管壁に余分な脂が沈着し、血管の内側に膨らみが作られます。

これらの余分な脂は比較的短期間で血管壁にたまるため、柔らかくて壊れやすいものですが、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなって、血管がつまりやすい状態になります。
コレステロール値は高くても自覚症状がありません。
そのため、こまめに血液検査をしてご自身のコレステロール値を把握し、適切な対策をとることが重要です。
コレステロール値を改善する方法

コレステロール値が異常値になり、薬物療法が必要になる前に生活習慣を改善することで数値の改善が期待できます。
これから具体的なコレステロール値の改善方法をご紹介します。
①食事を見直す

先にお話しした通り、コレステロールの2〜3割が体外からとり入れられ、7〜8割は糖や脂肪を使って肝臓などで合成されます。
コレステロールを効果的に下げるには、コレステロールを多く含む食品を減らすことに気を取られすぎず、以下のことに気を付けてください。
- ・「コレステロールの合成を増やす食品」を減らすこと
- ・「コレステロールを合成させにくい食品」を増やすこと
下記の表を参考にして、肝臓で生成されるコレステロールの量が過剰にならない食事を目指しましょう。
コレステロール合成を増やす食品とさせにくい食品例
コレステロールの合成を増やす食品 | コレステロールを合成させにくい食品 |
---|---|
脂身の多い肉(ロース・バラ肉・霜降り・ひき肉など) | 植物性油(オリーブ油・シソ油・アマニ油) |
加工肉(ウインナー・ベーコン・ソーセージ・ハム) | 大豆・大豆製品(豆腐・厚揚げ豆腐・油揚げ・味噌・納豆・豆乳・おから・きなこ) |
高脂肪乳製品(生クリーム・チーズ・バター) | 海藻(昆布・わかめ・めかぶ・もずくなど) |
インスタントラーメン | 玄米・麦飯・雑穀 |
菓子パン | 野菜 |
洋菓子(チョコレート・クッキー・ビスケット・ドーナッツ・ケーキ) | きのこ(しいたけ・しめじ・えのき・エリンギなど) |
スナック菓子(ポテトチップスなど) | 青背の魚(イワシ・アジ・サバなど) |
下記のコラムではコレステロール値を改善する簡単な料理を紹介しています。日々の食事に取り入れてみてください。
②禁煙する
喫煙は、HDL(善玉)コレステロールを減らす一方で、LDL(悪玉)コレステロールをさらに増加させやすくします。
喫煙期間が長い方でも、禁煙をスタートするとその日から血管が強力に収縮するような負担、血圧上昇につながるリスクを減らすことができます。
「今から禁煙しても遅い…」ということはありません。チャレンジしてみるのはどうでしょうか。
1人で禁煙するのが難しい方は禁煙外来などを利用するとよいでしょう。
③運動する
毎日合計30分以上を目標に、中強度以上の有酸素運動を行うことが推奨されています。
運動の目安
運動種目 | ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング、サイクリング、ベンチステップ運動などの大きな筋をダイナミックに動かす身体活動 |
---|---|
運動時間・頻度 | 1日合計30分以上を毎日(少なくとも週3日) |
運動強度 | 中強度以上(通常の歩行あるいはそれ以上の強度)※ |
※心血管疾患や骨関節疾患がある場合や低体力者の場合は掃除、洗車、子どもと遊ぶ、自転車で買い物に行くなどの生活活動のなかで身体活動量を増やすことからはじめてもよい。
運動する時間を確保することが難しい場合は、駅で階段を使ったり、バスではなく自転車を使うなど、生活の一部に運動を取り入れましょう。
1人だと続かない場合は家族や友人と約束をして定期的にウォーキングしたり、一緒にジムに通うと続けやすくなります。
まとめ
コレステロールについて説明してきました。重要なポイントは下記の通りです。
- ・コレステロールは体に必要な物質である。
- ・LDL(悪玉)は肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがある。
- ・HDL(善玉)は余分なコレステロールを肝臓へ回収する働きがある。
LDLコレステロール値だけを下げれば健康になれるという考えは改める必要があります。
つまり、注意が必要なのは単純に「LDL(悪玉)を下げる」ことだけがコレステロール対策ではないということです。
HDL(善玉)を上げて、LDL(悪玉)を下げて、HDLとLDLの「比率のバランス」を整えることが大切です。
ご自身のLDLコレステロール値とHDLコレステロール値を下記のページにあるフォームに入力することでLH比を算出できます。基準値などもまとめているのでぜひ参考にしてください。

食事・禁煙・運動による対策を実施し、HDLを上げ・LDLを下げる。HDL(善玉)とLDL(悪玉)の比率バランスを整えましょう。