女性のLDLコレステロール基準値:高い場合の原因と改善法
女性と男性でコレステロールの基準値の設定に違いがあることをご存じですか?
「え、知らなかった!」という方も多いのではないでしょうか。
実は、女性はLDLコレステロール基準値が年齢によって異なります。LDLコレステロールが高くなるには理由がいくつかありますが、とくに更年期と呼ばれる年代の女性は、閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することが原因とされています。
この記事では、女性のLDLコレステロール基準値と高くなる原因の説明と共に、食生活や効果的な運動方法、サプリの摂取などでのLDLコレステロール値を改善するポイントを紹介しています。

監修
株式会社レイデルジャパン
コンシューマーヘルスケア事業本部 RA,R&D統括
単 少傑 薬学博士
女性のLDL基準値はどれくらい?
若年層では男性のLDLコレステロール値の方が女性よりも高い数値を示しますが、中年になるとこの傾向は逆転し、男性のLDLコレステロール値よりも女性の方が高くなるとされています。
このセクションでは以下のことを説明していきます。
- ①女性のLDLコレステロール基準値
- ②基準値を超えた場合の健康への影響
- ③女性のLDLコレステロール値が高くなる要因
年代別LDLコレステロール基準値
女性の年代別LDLコレステロール基準値は以下の通りです。
年齢 | 基準値(㎎/dL) |
---|---|
30~44歳 | 61~150 |
45~64歳 | 73~185 |
65~80歳 | 84~189 |
日本人間ドック学会の検診基本項目の基準範囲によると、女性のLDLコレステロールの基準値※は30~44歳女性が 61~150㎎/dL、45~64歳女性が73~185㎎/dL、65~80歳女性が84~189㎎/dL。年齢別に異なり、年齢を重ねるにつれて高く設定されています。
※健診や人間ドックで用いられる基準値とは、健康な人々の検査データを統計学的に算出した数値のことです。 このデータは、20〜60歳くらいまでの健康な人の検査成績をもとに、上限と下限の2.5%ずつを除外したもので、残りの95%の人の数値が基準範囲とされています。
基準値を超えた場合の健康への影響
では、この基準値を超えるとどのような影響があるのでしょうか。
LDLコレステロールが過剰に増加すると徐々に血管壁内に蓄積・酸化していきます。そして血液が通る通路を狭くしてしまうため、循環が滞ってしまいます。
このような状態が長く続くと、重篤な疾患を引き起こす可能性が高まり、心臓に負担がかかったり、冠動脈が詰まってしまう恐れがあります。
女性のコレステロールが高くなる要因
更年期と呼ばれる年代の女性は、閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することでLDLコレステロール値が高くなると言われています。
エストロゲンにはLDLコレステロールを減らしHDLコレステロールを増やして血管を若々しく保つ重要な働きがあります。一般的に、閉経前にはエストロゲンが働くため、コレステロール値が異常になることはほとんどないとされています。
しかし、年齢と共に女性ホルモンの分泌が減少し始めるとこの働きが弱くなり、余ったLDLコレステロールが血液中に蓄積。血管がつまりやすくなってしまうのです。
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厚生労働省による2019年国民生活基礎調査でも、男性は「脂質異常(高コレステロール血症等)」が第5位に対して、女性は第2位という結果になっています。
特に閉経後の女性は正しい知識を持ちながら、コレステロール管理を行う必要があると言えるでしょう。
コレステロール値改善のポイント
「最近、コレステロールが高めになってきて、解決方法を探している」という方も多いと思います。
ここからはコレステロール改善のための3つのポイントをご紹介します。
食生活の改善
農林水産省によると、飽和脂肪酸(冷蔵庫に入れると固まる油)を多く摂取すると血中コレステロールが上がり、健康リスクが増加すると言われています。
飽和脂肪酸は、下記の表のように肉類の脂身や牛乳などの乳脂肪分等に多く含まれています。これらは知らないうちに摂り過ぎてしまっていることがあるため注意が必要です。
動物性脂肪や脂身の多い肉を控え、脂身をとり除いた肉や赤身肉を食べるようにしましょう。牛乳は低脂肪乳に変えるなどの工夫をして摂取するのがよいでしょう。
コレステロールを上げる食品
肉 | 牛肉の脂身/豚肉の脂身/鶏肉の皮 |
---|---|
肉加工食品 | ウインナー/ベーコン/ハム |
乳脂肪分 | 牛乳/チーズ/ヨーグルト |
動物性油脂・洋菓子類 | ケーキ/バター/クッキー |
その他 | 卵黄/即席麺 |
コレステロールを下げる食品
下記の表はコレステロールを下げる効果が期待できる食品です。
オリーブオイルや、あじ・さんまなどの青背の魚に含まれる不飽和脂肪酸(冷蔵庫に入れても固まらない油)は、HDLコレステロールを下げずにLDLコレステロールを減らす働きがあります。
また、納豆・豆腐などに含まれる大豆たんぱくは、コレステロールの吸収を抑える働きがあるので不飽和脂肪酸と一緒に食事に取り入れましょう。
1日の摂取目安は豆腐なら1/3丁、納豆なら1パックと言われています。
さらに、野菜や果実類・海藻・きのこ等に含まれる食物繊維は血中コレステロール値を下げる働きがあると言われています。
野菜・果物類 | かぼちゃ/人参/ブロッコリー/ほうれん草/りんご/みかん |
---|---|
きのこ類 | しめじ/しいたけ/マッシュルーム |
青魚 | サバ/カツオ/秋刀魚 |
大豆・海藻類 | 納豆/豆腐/ワカメ |
植物性油脂 | サラダ油/オリーブオイル/菜種油 |
不飽和脂肪酸は、多く摂ることが望ましいです。
そして飽和脂肪酸を多く摂ったら、次の食事では不飽和脂肪酸を多く摂れるように工夫しましょう。バランスの良い食事を心がけることが大切です。
FITTに基づく運動習慣
有酸素運動はLDLコレステロールを下げることが知られています。また基礎代謝も上がることで脂肪も燃焼しやすくなり、血圧も下がるとされています。
ですが、ただ長時間運動し続けたからといって有酸素運動になるわけではありません。
対象者の体力に合わせた「FITT」によって有酸素運動として効果があるかどうかが異なります。まずはFITTTを設定しましょう。
FITTとは
英単語 | 意味 | 推奨 |
---|---|---|
F:frequency | 運動の頻度 | 厚生労働省の推奨:運動の頻度は週3日〜5日 |
I:intensity | 強度 | 厚生労働省の推奨:3メッツ以上の強度の運動(通常の歩行以上の強度の運動) |
T:time | 継続時間 | 時間は1日の合計30分以上の有酸素運動が効果的 |
T:type of exercise | 運動の種類 | ウォーキング/速歩/ジョギング/水泳/スロージョギング/サイクリング 大きな筋をダイナミックに動かす身体活動/球技/レクリエーションスポーツ など |
FITTとは、運動処方の4つの要素です。運動の頻度(frequency)、強度(intensity)、継続時間(time)、運動の種類(type of exercise)の英単語の頭文字を組み合わせた言葉です。
この要素を適切に組み合わせることで、運動の効果を最大化することができます。
「3メッツ」以上の生活活動(身体活動量の目標の計算に含むもの)
3メッツ以上の運動とは、安静時の3倍以上のエネルギーを消費する運動のことです。しかし、心血管疾患や骨関節疾患がある場合や体力のない方は、急な運動で体に負担を掛けないようにしましょう。
3メッツ以下ですが、「犬の散歩」や「屋内の掃除」「家財道具の片付け」など、日常生活の中で身体活動量を増やすことからはじめてみてください。

有酸素運動と無酸素運動の違い

有酸素運動と無酸素運動の主な違いは、運動中に酸素を必要とするかどうかです。
有酸素運動は脂肪を主なエネルギー源とし、無酸素運動は筋肉内に蓄えられた糖質をエネルギー源としています。前者はウォーキング、ジョギング、水泳などの長く続けられる運動、後者は筋力トレーニングや短距離走、ウェイトリフティングなどの短時間で強い不可をかけて行う運動のイメージです。
サプリの摂取
体内コレステロール全体の70-80%は体内の肝臓や腸などで作られた「内因性コレステロール」と呼ばれるコレステロールが占めています。そして、残りの20-30%が食事として摂取した「外因性コレステロール」と呼ばれるコレステロールです。
つまり、食事から取り入れるコレステロールは全体のわずか20〜30%程度だということがわかります。
食事療法や運動療法をおこなっても血液中のコレステロール値が目安とされている値まで下がらない場合は、薬を使うことが基本になります。薬には抵抗があるという方はサプリメントを活用を検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
女性の年齢とコレステロール値には関係があることがわかりました。
食生活の改善やFITTに基づく運動習慣を積極的に日々の生活に取り入れて、改善を目指しましょう。