キューバと健康:キューバの高水準なヘルスケアシステム

2020.05.08

キューバでは、国民の健康を維持する予防策に重点が置かれた高水準な医療体制が整っています。キューバの医療技術は最先端のバイオテクノロジーを利用した医薬品開発、診断技術の分野でも急速に発展しています。今や医療先進国となったキューバの医療をご紹介します。

キューバは第三世界の国家ではありますが、その医療レベル、臨床研究レベルの高さについては医療関係者以外はあまり知られておりません。キューバの医療システムは、米国のようないわゆる先進国と称される国々と比較した場合でも、医療技術の先進性、効率の良い医療サービスの提供、医療水準レベルの高さという面で全く引けを取らず、世界中で高く評価されています。またキューバの人々への医療サービスレベルの高さは、先進国と同等もしくはそれ以上のレベルにあり、もっと注目され、評価されるべきです。

1950年代以降、キューバの医師と患者の比率は大幅に増加しました。そして1960年代に、キューバ政府は全キューバ国民に対しワクチン接種を行うプログラムを実施しました。この政策により、ポリオや風疹のような伝染病が一掃され、1970年代以降行われた妊産婦に焦点をあてた医療政策により乳児死亡率が大幅に減少しました。

キューバの乳児死亡率は世界で最も低水準で2.4%とオーストラリアとほぼ同じです。一方、平均余命は約78.7歳と高水準にあります。また、キューバはバイオテクノロジーを利用した医薬品開発では世界をリードしており、また病気の診断技術の高さも知られています。

キューバの医療システムでは他の国が積極的に取り入れていない方法も取り入れています。それは「病気の予防に重点を置いき、自然由来の伝統的な薬を効果的に使用する。」ことです。キューバでとれる薬草、野菜はすべて無農薬のオーガニックで栽培されています。


世界的に有名な予防医療制度

キューバのヘルスケアは無償で政府から提供されています。
ヘルスケアの無償提供は国家がリーダーシップを持って提供し、全国民が受けることのできる普遍的な権利と見なされています。キューバは米国からの長年にわたる経済封鎖のため、医療品の調達リソースが限られています。そのため、予防医療はキューバのヘルスケアモデルの根底にあり、唯一の選択肢となっています。しかし「病気を予防すること」は熱帯地域でもあるキューバでは簡単なことではありません。

2014年、当時世界保健機関(WHO)の局長であったマーガレット・チャン(Margaret Chan)はハバナを訪問しました。彼女はそこで見たものに感銘を受けたそうです。※1。

マーガレット・チャンはこう言いました。
「キューバは、研究開発に密接に関係する医療制度を持つ唯一の国です。人間の健康はイノベーションによってのみ改善することができるため、これはまさに医療というものが進むべき道です。」

彼女は続けて「健康を開発の重要な柱として位置づける」というキューバ国家のリーダーシップを称賛しました。


予防診断システムの実現

キューバの効率的な医療システムの鍵はその包括的なアプローチ方法にあります。国家はすべての市民に毎年健康診断を提供します。この政策により全国民の健康状態を偏ることなく完全にモニタリングすることが可能になります。キューバのほとんどの自治体には専門の医療センターがあり、そこに訓練を受けた医師が配属され、病院で働く看護師や専門家のサポート体制も整っています。

「多くの医師がいなければこの政策の実施は不可能だ。」と誰もが思うでしょう。その通りです。キューバには実際非常に多くの医師がいます。2005年キューバ国家は人口対医師数の比率で、世界のトップになりました。2005年時点では人口1万人当たり67名の医師数でしたが、2015年には1万人あたり約80名の医師数に増加しました。これは市民1,000人に対して8人の医師がいるという意味です。

この「医師数に余裕がある」という環境は様々な医療サービスを提供することが可能になります。特に予防医療というのは実現できるのであれば患者が重篤化する前に病気を防ぐことができるので、患者本人に対してもまた医療にかかる費用面においても効果が高い方法です。

そのためキューバでは余裕のある医師数という恵まれた環境を生かし、病気予防を目的として患者を様々な点から調査診断します。


キューバの医療バイオテクノロジーと医薬品開発

キューバは現在バイオテクノロジーや医薬品開発において、特に抗がん剤や心血管系薬剤分野の開発で世界の医療業界をリードしています。

首都ハバナの近くにある分子免疫学センター(CIM)は、キューバの医療科学とバイオテクノロジーのための確固たる基盤となっている研究所です。ここはキューバの国立腫瘍学放射線研究所を発端に発展し、今は様々な医療研究を行う複合研究施設となっています。

キューバ政府は現在まで科学研究に多大な投資を行っており、健康、薬理学、免疫学、遺伝学および生物科学の分野での臨床試験は数え切れないほど多くのイノベーションをもたらしました。キューバではCIMは最先端の医療を開発するための最高機関として知られています。

Bio Cuba Farma Enterprise Groupは、健康科学をリードするキューバのもう1つの代表組織です。多くの科学プロジェクトに精力的に取組み、世界レベルの革新的な医薬品、診断システム、医療機器、その他の健康に役立つ製品の開発をしています。また、同機関は「国の食糧生産に貢献する」という研究使命の一環として農業および畜産バイオテクノロジー分野のプロジェクトにも取り組んでいます。

キューバインサイド・ザ・ワールドの記録によると、キューバは2015年に母子間におけるHIV-AIDSの感染をf防ぐことに成功した世界で最初の国になりました。それは、Bio Cuba Farmaが供給した革新的な診断機器とHIVとエイズ患者を治療するための抗レトロウイルス薬がもたらした素晴らしい成果でした。


伝統的な自然療法を用いたアプローチ

キューバの医療制度の中に組み込まれている伝統医療は、キューバ国民にとって身近なもので手頃な価格で入手できるものです。また医学的な有効性においても西洋医学由来の医薬品と遜色ないものもあり、キューバ医療制度の中で大きな役割を果たしています。1990年代以降、政府は「グリーンメディスン」と呼ばれる薬草を使った方法や鍼治療によって提供可能なヘルスケアソリューションを推進してきました。これは費用対効果の面でも有効でした。

伝統的な漢方薬はキューバでは比較的人気があります。WHOの Global Report on Traditional and Complementary Medicine 2019によると国民の80~90%に当たる人々が使用しています。しかし、この伝統的な漢方薬はThe State Center for the Control of Medicines,Equipment and Mecical Devises(CECMED)によって承認されているものは少ないです。CECMEDはキューバの医薬品、機器、医療機器の規制当局で、品質、安全性、有効性のある製品の市場へのタイムリーなアクセスを保証できる規制システムを通じて公衆衛生の促進と保護等を担当する機関です。
 キューバ国民にとって薬草のような天然資源を巧みに利用しすることは伝統医療に則った習慣であり、キューバ国中に広まっています。またこれらの天然資源を使用し、疾患を効果的かつ効率的に、治療、予防する方法の研究開発も行われています。

キューバは全部で15州ありますが、各州に1か所の自然由来の伝統医薬品(NTM)製造施設が全部で10か所あります。Health’s NTM departmentの部門長であるJohann Perdomo Delgado氏によると、2017年末までに医薬品基準を満たすようにCECMEDの認可を受けるように国から指導されてます。これは伝統医薬品製造施設のインフラと技術の改善を行い、キューバ農業省から提供される植物由来のエネルギー資源を確保する目的で行われています。


現在のキューバの伝統医学

現在も自然由来の伝統医学はキューバのヘルスケアモデルにとって不可欠であり、病気に対するアプローチの一つとして現代医学と共存しています。Johann Perdomo Delgadoは、2017年に何百万人もの人々に自然由来の医薬品と伝統的な治療法が与えられたと述べています※2。また、NTMには、phytodrugs(植物由来の薬)とミツバチ由来の製品の提供に加えて、鍼治療といくつかの自然治療法、伝統的な運動による予防医学も加えられました。

キューバの国営自治体の各診療所は伝統的な医療サービスを提供しており、多くの薬局がさまざまな自然療法を提供しています。また、国全体の健康度を考えると、自然療法の恩恵が寄与している点も認められるでしょう。


 

※1 https://www.tercerainformacion.es/antigua/?article71126

※2 https://www.researchgate.net/publication/332158714_Integracion_de_la_medicina_natural_y_tradicional_cubana_en_el_sistema_de_salud_Integration_of_Cuban_natural_and_traditional_medicine_in_the_health_system